人知れず、夜泣き。

 「ツイてないなー。 悟が彼女さんとあのスーパーにいたって事はさ、多分、彼女さんのお家がこの近くにあるって事だよね。 ヤダなー。 たまにあのカップルに遭遇したりするのかなー。 辛いなー」

 木内は『はぁ』と溜息をひとつ吐くと、カシオレを一口飲んだ。

 何がそんなに辛いのだろう。

 あんな普通でしかない、しかも浮気する様な男に、どうして未練があるのだろう。

 「木内さんは、元カレのどこが好きだったの??」

 「・・・んー。 どこだろう。 ・・・何か、ワタシと似てるの。 だから、一緒にいるのが楽だった」

 木内が、伏し目がちに寂びそうな顔をした。

 「どこが似てたの??」

 「・・・んー。 まず、歳が一緒だから話が合うし、育った環境も似てたから、価値観も近かった」

 木内に、『オレと一緒にいるのは楽しくない』と言われている様な気がした。

 だって、オレと木内は歳も違うし、育った環境も似ていない。

 でも、オレは木内と話が合わないと思った事なんて、1度もない。

 「それは、オレといる時とどう違うの?? オレといるのは楽じゃない??」
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