人知れず、夜泣き。

 「楽しいけど、楽ではないかも。 いっつもちょっと気張ってるよ。 オバサンだから、若いコの話を理解出来るかどうか、わりとドキドキする。 まぁ、それも面白いから全然嫌じゃないんだけどね」

 木内の言葉が、何か納得いかなかった。

 だって、歳なんか追いつけるわけがない。

 そんなんで楽か楽じゃないかを言われても、どうする事も出来ない。 それに、

 「オレは、木内さんと喋るのに全然緊張とかしないけどな。 分かんない話されたら『それ、どういう意味??』って聞けばいい話だし」

 木内の挙げる問題点は、すぐに解消出来るものだし。

 「そっか。 そうだね」

 「だから、楽。 オレは、木内さんといるの、楽」

 「じゃあ、ワタシも楽にしてイイんだ」

 そう言うと、木内が床に転がりだした。

 「ワタシ、宅飲でキッチリ座って飲むの、あんまり好きじゃないの。 グダグダだらだらゴロゴロしながら飲みたいの」

 木内の、掌で頭を支え、床に肘をつくスタイルはおっさんそのものだった。

 オレ、完全に男扱いされていない。

 別にいいけど。

 オレもその方が楽だから。

 「うん。 楽に飲もうよ」

 オレも木内の隣に寝転がる。
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