人知れず、夜泣き。



 結局木内は泣かなかった。

 飲んで、くだらない話をして、笑って。

 楽しかった。

 隣同士で寝転がって喋っても、オレらの間には何もなく、22:00には木内の部屋を出た。

 女の部屋に来て、何もせずに帰ったのは初めてだ。

 ホントは何度か触ろうとした。

 でも、出来なかった。

 気まずくなるのが嫌で、社内の人とは付き合わないと言っていた木内。

 身体を重ねてしまったら、今の関係が崩れてしまいそうで怖かった。

 木内といる、心地良い空間を失うなんて、絶対に嫌だった。
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