いとしいあなたに幸福を
06 落葉-らくよう-
今日は非番だったらしい愛梨は、自室で独り本を読んでいた。
愛梨と悠梨は二人で一部屋を共用しており、以前はよく悠梨と他愛ない話をしに来たり陽司から逃げるときに訪れたりしていた。
しかし都との婚約後は殆ど行けなくなっていたため、久々の訪問に愛梨は酷く驚いているようだった。
「周、さん…?」
どうしたんですか、と少し戸惑いがちに問われ、周はどう説明したものかとがしがしと頭を掻いた。
「お兄ちゃんなら何処かに出掛けてるみたいですけど…」
しかもどうやら悠梨に用があると思われているようだ。
「あー…その悠梨がな?愛ちゃんと仲直りしたいそうなんだ。それで、君にこれを渡したいんだけど、自分で渡すのは上手く出来ないなんて言ってさ」
「え…?」
周から差し出された袋を受け取ると、愛梨は困ったように俯いた。
「お兄ちゃんったら、周さんは忙しいのに…すみません」
「いいんだ。ちょうど俺も、少し時間が空いてたから。それにこの前、君を怖がらせちまったし」
「いえっ…私のほうこそ、立ち聞きみたいなことをしてしまって……すみませんでした」
愛梨は一度顔を上げて勢いよく首を振ったが、周と視線が合った瞬間また下を向いてしまった。
「…愛ちゃんにはいつも、俺が母と上手く行ってないのがばれちまうな」
初対面のとき既に、厘との確執を見抜かれていたことは陽司から聞いていた。
何故この子にはいつも、自分のことを見透かされてしまうのだろう。
自分は君のことが全然解らなくて、顔を合わせる度に君のことを沢山知りたくなるのに。
愛梨と悠梨は二人で一部屋を共用しており、以前はよく悠梨と他愛ない話をしに来たり陽司から逃げるときに訪れたりしていた。
しかし都との婚約後は殆ど行けなくなっていたため、久々の訪問に愛梨は酷く驚いているようだった。
「周、さん…?」
どうしたんですか、と少し戸惑いがちに問われ、周はどう説明したものかとがしがしと頭を掻いた。
「お兄ちゃんなら何処かに出掛けてるみたいですけど…」
しかもどうやら悠梨に用があると思われているようだ。
「あー…その悠梨がな?愛ちゃんと仲直りしたいそうなんだ。それで、君にこれを渡したいんだけど、自分で渡すのは上手く出来ないなんて言ってさ」
「え…?」
周から差し出された袋を受け取ると、愛梨は困ったように俯いた。
「お兄ちゃんったら、周さんは忙しいのに…すみません」
「いいんだ。ちょうど俺も、少し時間が空いてたから。それにこの前、君を怖がらせちまったし」
「いえっ…私のほうこそ、立ち聞きみたいなことをしてしまって……すみませんでした」
愛梨は一度顔を上げて勢いよく首を振ったが、周と視線が合った瞬間また下を向いてしまった。
「…愛ちゃんにはいつも、俺が母と上手く行ってないのがばれちまうな」
初対面のとき既に、厘との確執を見抜かれていたことは陽司から聞いていた。
何故この子にはいつも、自分のことを見透かされてしまうのだろう。
自分は君のことが全然解らなくて、顔を合わせる度に君のことを沢山知りたくなるのに。