いとしいあなたに幸福を
「 謝ったよ。両頬、挟んで叩かれた」

悠梨の回答に、愛梨はくすくすと笑い声を上げた。

ああ、良かった、いつもの愛梨だ。

「…お兄ちゃん、わたしね、赤ちゃんが生まれたらその子の遊び相手になるんだよ」

愛梨は心底嬉しそうに、悠梨にそう報告した。

「愛梨、お前…」

「さっき、周さんと約束したの。お邸で一番小さいのはわたしだから…きっと仲良くなれると思って」

愛梨は集落で暮らしていた頃も、小さな子供たちに好かれていた。

良く愛梨と遊びたがる子供同士で、愛梨の取り合いなんてものがされていたこともある。

愛梨は子供が好きだったし、子供たちも優しく接してくれる愛梨に懐いたのだろう。

「だけど、愛梨…いくらお前でも二人の子は…」

生まれてくるのは、お前の好きな男と、別の女性との間に出来た子だ。

近所の子供と遊ぶのとは訳が違う。

「…大丈夫だよ。わたし、周さんのことが好きだけど都様のことも好き。二人とも大好き。だから二人の赤ちゃんのこともきっと好きになるよ」

「っ愛梨…」

悠梨はそう言って笑って見せた妹の腕を引いて、抱き締めた。

「お兄ちゃんっ…痛い…」
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