いとしいあなたに幸福を
「あ…なた…」
周は咄嗟に都の身体を掻き抱いた。
事態を察知した付き添いの看護師が、俄に廊下へ駆け出してゆく。
「私には、もう……」
「都っ…!都、駄目だ…!!誰か…!誰か来てくれ…都が…!!」
備え付けの通話装置へ、必死で呼び掛ける。
俄に廊下が騒がしくなったが、都は再び力なく首を振った。
「…あなた……お願い、私の…眼を見て……」
「都…っ?」
その蒼い空色の眼を覗き込むと、都は満足げに微笑んで周の頬にそっと両手を添えた。
「愛しい、あなた……京を…私の分までたくさん愛してあげて…」
――次の瞬間、都の両手からすとんと力が抜ける。
「っ…!」
先刻まで周を見つめていた筈の眼は閉ざされ、呼吸が止まる。
「都!!」
呼び掛けても、掌を握っても、周の声も温もりも都へはもう届かなかった。
* * *
周は咄嗟に都の身体を掻き抱いた。
事態を察知した付き添いの看護師が、俄に廊下へ駆け出してゆく。
「私には、もう……」
「都っ…!都、駄目だ…!!誰か…!誰か来てくれ…都が…!!」
備え付けの通話装置へ、必死で呼び掛ける。
俄に廊下が騒がしくなったが、都は再び力なく首を振った。
「…あなた……お願い、私の…眼を見て……」
「都…っ?」
その蒼い空色の眼を覗き込むと、都は満足げに微笑んで周の頬にそっと両手を添えた。
「愛しい、あなた……京を…私の分までたくさん愛してあげて…」
――次の瞬間、都の両手からすとんと力が抜ける。
「っ…!」
先刻まで周を見つめていた筈の眼は閉ざされ、呼吸が止まる。
「都!!」
呼び掛けても、掌を握っても、周の声も温もりも都へはもう届かなかった。
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