いとしいあなたに幸福を
「陽司さん」
「悠梨くん…何だか久しぶりだね」
廊下で久しぶりに鉢合わせた陽司は、少し疲れた表情で悠梨に笑い掛けた。
陽司は、領主である周の代理の仕事に日夜追われている。
だから遠目に姿を見掛けても、忙しそうな彼に声を掛けるのは憚られた。
「大変そう…ですね」
「うん、だけど周様はずっとお一人で頑張っていらっしゃったからね…俺や美月は、周様が復帰されたとき負担が少ないようにしておかなきゃ」
厘が亡くなって、以前から周が跡目を継ぐことに不満を持っていた古株の配下たちは、半数が辞職していた。
そのとき去らなかった者の中にも、一向に立ち直らない周の様子に痺れを切らして去っていった者もいる。
残ったのは、周と親しかった者や元々周直属の部下だけだった。
使用人たちは事情を知る者や噂好きの者が多いせいか、あまり辞職する者は出なかったのだが。
「あいつ、陽司さんがいてくれなかったらどうするつもりだったんですかね。家族を亡くしてつらい気持ちは解るけど、このままじゃ…」
誰もが多少なりとも思っているが口にしないことを、悠梨は敢えて陽司に対して吐露した。
自分には友人として、そう言ってやることくらいしか出来なくて。
「……周様はあれ以来、誰かと接するのを怖がっているように見えるんだ」
「怖がる…?」
「部屋に籠って誰かが傍に近付こうとすると拒絶する…他者がご自分と関わり合いになるのを嫌がってらっしゃるようなんだよ」
「何で、そんなこと…」
「悠梨くん…何だか久しぶりだね」
廊下で久しぶりに鉢合わせた陽司は、少し疲れた表情で悠梨に笑い掛けた。
陽司は、領主である周の代理の仕事に日夜追われている。
だから遠目に姿を見掛けても、忙しそうな彼に声を掛けるのは憚られた。
「大変そう…ですね」
「うん、だけど周様はずっとお一人で頑張っていらっしゃったからね…俺や美月は、周様が復帰されたとき負担が少ないようにしておかなきゃ」
厘が亡くなって、以前から周が跡目を継ぐことに不満を持っていた古株の配下たちは、半数が辞職していた。
そのとき去らなかった者の中にも、一向に立ち直らない周の様子に痺れを切らして去っていった者もいる。
残ったのは、周と親しかった者や元々周直属の部下だけだった。
使用人たちは事情を知る者や噂好きの者が多いせいか、あまり辞職する者は出なかったのだが。
「あいつ、陽司さんがいてくれなかったらどうするつもりだったんですかね。家族を亡くしてつらい気持ちは解るけど、このままじゃ…」
誰もが多少なりとも思っているが口にしないことを、悠梨は敢えて陽司に対して吐露した。
自分には友人として、そう言ってやることくらいしか出来なくて。
「……周様はあれ以来、誰かと接するのを怖がっているように見えるんだ」
「怖がる…?」
「部屋に籠って誰かが傍に近付こうとすると拒絶する…他者がご自分と関わり合いになるのを嫌がってらっしゃるようなんだよ」
「何で、そんなこと…」