いとしいあなたに幸福を
「俺も、愛梨も…!お前がいたから生きてるのに…っ!!」

駄目だ――もう俺のことなんか、気に掛けないでくれ。

俺のせいで二人にまで何かあったら、俺はどうすればいいんだ。

「周…!!都さんが命懸けで遺してくれた忘れ形見を、どうするつもりだよ…!!あの子はお前を恋しがって、いつも疲れて眠るまで泣き続けるんだぞ!!」

――京。

生まれたばかりの、自分の息子。

俺が、恋しい?

あんな赤子に、父親が誰なのか判るものなのか?

都を彷彿とさせる、蒼い眼。

あの空色の眼に見つめられると、死ぬ間際の都を思い起こす。

それが苦しくて、悲しくて、あの眼を見つめることが出来なくて息子の傍にいられなくなる。

それにもし、自分のせいであの子にも何かあったら、俺は正気でいられないかも知れない。

「お前が傍にいないとあの子は…今のお前と同じ想いをしなければならなくなるんだぞ…!!お前は、それでもいいのかよっ?!」

今の、自分と同じ。

…昔は、自分に子供が生まれたら寂しい想いは絶対にさせたくないと思っていた。

母に余り愛されず、厳しく育てられたことがつらかったから。

でも都の妊娠が判ったとき、ふと一抹の不安が過ぎった。

愛されなかった自分に、子供を上手く愛せるのだろうかと。
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