いとしいあなたに幸福を
「お前がつらいのは解るよ、俺や愛梨だって両親は死んでしまった…殺されたんだっ…それでも愛梨は自分よりもお前のほうがもっとつらいだろうって言うんだぞ…!!」

悠梨や愛梨は、強い。

俺は駄目だ、強い振りをしていたが、実際にはこんなにも脆い。

「愛梨は…お前が戻ってくるまで、お前の息子を代わりに守ってやりたいと俺に言ったんだ……」

「…?」

…何故。

どうして其処まで、強い君でいられるんだ。

どうして俺の息子を、君にとって他人の子供である京を、そんなにも慈しんでくれる。

俺は愛することも愛されることも、恐ろしくなってしまったのに。

「お前の子な…愛梨が抱き上げてやるときだけは、不思議とすぐに泣き止むんだよ。だから、愛梨は…」

京が、泣き止む――

名の通り、慈愛に満ちた、優しい愛梨。

京にも彼女のその想いが伝わっているのか?

「…だけど、一番いいのはきっとあの子をお前の腕に抱いてやることだと思うよ。愛梨も邸のみんなもそう思ってる。みんな…周が元気になるのを待ってるんだ……」

みんな、待ってる……待っていて、くれるのか。

悠梨と愛梨、陽司を始めとする俺の部下たちや邸の使用人たち、それに――京。

まだ、俺のことを必要としてくれているのか。
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