いとしいあなたに幸福を
「だから周、少しずつでいいから…お前の馬鹿みたいに明るく笑った顔、早くみんなに見せてやれよ……でないとこの邸はいつでも夜みたいに暗いんだ…」

俺の、笑顔。

『私にとってあなたは、いつも明るく私を見守ってくれる…陽の光だった…』

お前も都と似たようなことを言うのか。

今の俺に、そんなことを言って貰える資格はないのに。

「お前の周りにいるみんなは、お前のことが好きなんだ…それが何でなのかお前には解らないのか…?」

不意に、ごつんと扉に何かを打ち付けたような鈍い音が響く。

「…俺はお前の友達、だからな」

そう言い終えると、悠梨は立ち去っていったようだった。

…友達、か。

周は緩慢な動きで身を起こすと、扉のほうを見つめて目を細めた。

「…悠梨……」


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