いとしいあなたに幸福を
扉から顔を覗かせると、使用人たちが大勢、慌てた様子で右往左往していた。

「あの」

そのうちの一人を捕まえて声を掛ける。

「何かあったんですか…?」

「ああ、愛ちゃん!ちょうど良かったわ、悪いけど手伝って欲しいの!」

「えっ」

「周様がお部屋から出てこられたのよ!」

「!!」

周が、出てきてくれた――

「でも、ずっと籠り切りだったせいで少し衰弱されていて…周様のお世話にみんな大忙しなんだけど、人手が足りないのよ」

「衰弱…?」

どのくらい具合が悪いのだろうか。

周のことが心配だったが、京のことを放り出して行く訳にはいかない。

「でも、わたしは…」

躊躇いがちに断ろうとしたとき、後ろから肩を叩かれて振り向くと、優しく微笑む咲良が立っていた。

「愛ちゃん。みんなのお手伝いをしてあげてきて」

「え……でも…」

「京様もお腹を空かせて泣かれるときは、お腹いっぱいになれば私だけでも大丈夫よ。だから、そちらが一段落したら戻ってきて頂戴?」
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