いとしいあなたに幸福を
不意に上がった弱々しい怒声に、架々見は不快げに眉を顰める。

いつの間に目を覚ましたのか、悠梨が架々見の足元に掴み掛かっていた。

「ふん…仔兎が、少しばかりでかくなったからと言って生意気な口を聞くな」

架々見は苛立った口調で吐き捨てると、その手を払い除けるように悠梨の顔面を蹴り飛ばした。

「ぐあっ!」

「お兄ちゃんっ!!」

悲鳴のような叫び声を上げた愛梨を一瞥すると、架々見は倒れ伏した悠梨の頭を勢い良く踏み付けた。

「うぅ、ぁあっ…!!」

「やめてっ!!」

架々見は勝ち誇ったように再び笑みを浮かべながら、憎悪の念を込めて自身を睨み付ける悠梨を見下ろした。

「くっく…お前が私に従えばすぐにでも止めてやるぞ、愛梨」

「っ駄目だ、愛梨…!どうせこいつはどちらを選んでもお前を逃す気なんかないっ…お前だけでも隙を見て逃げろっ!!」

床へぐりぐりと圧し付けられ、悠梨は苦しげに声を張り上げる。

すると架々見は悠梨を踏み付ける足に殊更力を込めた。

「まだ減らず口を叩く余裕があるようだな、煩い餓鬼だ」

「う、ぐぁっ…!!」

悠梨が必死で抗うも、架々見は全くよろめきもしない。

「お兄ちゃんっ…!お願い、やめてっ…!!」
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