いとしいあなたに幸福を
――薄暮の国へなんて、行きたくない。
架々見のものになんてなりたくない。
それでも、悠梨を死なせるよりはまだ良い。
ただ心残りなのは、幼い京のこと。
それから周にきちんと恩返しが出来なかったこと。
今頃、京は泣いてはいないだろうか。
周はもう邸に戻った頃だろうか。
いつかもう一度周が京をその腕に抱いてやる姿を、見届けたかった。
周が立ち直るまで代わりに京を見守ると決めたのに、その悠梨との約束も果たせなくなる。
「お兄ちゃん……約束、守れなくてごめんなさい…」
「愛梨、お前…っ」
思わず涙が溢れそうになったが、懸命に堪えた。
此処で泣いてしまったら、いけない。
「さあ愛梨、私のものになると言え。そうすれば兄を解放してやる…愛しい兄を霊奈の元まで送り届けてやろうではないか」
「愛梨!」
喉の奥から込み上げてくる、ない交ぜになった様々な感情を押し込めるように愛梨は大きく息を吸い込んだ。
「わたし、は…っ」
「――その必要はねえよ」
架々見のものになんてなりたくない。
それでも、悠梨を死なせるよりはまだ良い。
ただ心残りなのは、幼い京のこと。
それから周にきちんと恩返しが出来なかったこと。
今頃、京は泣いてはいないだろうか。
周はもう邸に戻った頃だろうか。
いつかもう一度周が京をその腕に抱いてやる姿を、見届けたかった。
周が立ち直るまで代わりに京を見守ると決めたのに、その悠梨との約束も果たせなくなる。
「お兄ちゃん……約束、守れなくてごめんなさい…」
「愛梨、お前…っ」
思わず涙が溢れそうになったが、懸命に堪えた。
此処で泣いてしまったら、いけない。
「さあ愛梨、私のものになると言え。そうすれば兄を解放してやる…愛しい兄を霊奈の元まで送り届けてやろうではないか」
「愛梨!」
喉の奥から込み上げてくる、ない交ぜになった様々な感情を押し込めるように愛梨は大きく息を吸い込んだ。
「わたし、は…っ」
「――その必要はねえよ」