いとしいあなたに幸福を
10 蒼穹-そうきゅう-
――遠くから小さな子供の足音が聞こえてくる。
足音は次第にこちらへ近付いてきて、勢い良く開いた目の前の扉から姿を現した。
「とーしゃま!」
現れた幼い少年に、周は優しく微笑み掛ける。
「京」
「おしごと、おわった?」
「んー。でも此処は煙たいから、余り来ちゃ駄目だって教えたろ?」
周は仕事用の部屋でだけ、煙草を吸うようにしている。
そのため京には、なるべくこの部屋に近付かないよう言い付けてあるのだが。
「周様、申し訳ありません…!周様の今日の執務がそろそろ終わる時間だとお教えしたら、お部屋を飛び出してしまわれて…」
すると咲良が息を切らせながら、遅れて部屋に駆け込んできた。
「だって、とーしゃまにあいたかったんだもん」
「でもきちんと言い付けを守れないと、父ちゃんは京のこと嫌いになっちまうぞ?」
すると京は空色の眼を潤ませて、泣きそうな顔になった。
「…うぇ」
周は苦笑して、息子の顔が良く見えるように京の目の前に膝を着いた。
「ちゃんと言い付けを守る子は大好きだよ。京、父ちゃんすぐに行くから、いい子で自分の部屋で待ってられるか?」
柔らかい金髪を撫でながら宥めてやると、京はまだ泣き出しそうな顔をしたままで頷いた。
足音は次第にこちらへ近付いてきて、勢い良く開いた目の前の扉から姿を現した。
「とーしゃま!」
現れた幼い少年に、周は優しく微笑み掛ける。
「京」
「おしごと、おわった?」
「んー。でも此処は煙たいから、余り来ちゃ駄目だって教えたろ?」
周は仕事用の部屋でだけ、煙草を吸うようにしている。
そのため京には、なるべくこの部屋に近付かないよう言い付けてあるのだが。
「周様、申し訳ありません…!周様の今日の執務がそろそろ終わる時間だとお教えしたら、お部屋を飛び出してしまわれて…」
すると咲良が息を切らせながら、遅れて部屋に駆け込んできた。
「だって、とーしゃまにあいたかったんだもん」
「でもきちんと言い付けを守れないと、父ちゃんは京のこと嫌いになっちまうぞ?」
すると京は空色の眼を潤ませて、泣きそうな顔になった。
「…うぇ」
周は苦笑して、息子の顔が良く見えるように京の目の前に膝を着いた。
「ちゃんと言い付けを守る子は大好きだよ。京、父ちゃんすぐに行くから、いい子で自分の部屋で待ってられるか?」
柔らかい金髪を撫でながら宥めてやると、京はまだ泣き出しそうな顔をしたままで頷いた。