いとしいあなたに幸福を
京がもう少し大きくなって、分別がつくようになったら、ちゃんと都のことを説明してやろう。

そうしたら、きっと愛梨を自由にしてやれる。

愛梨はずっと俺や京の傍にいてくれた。

俺や都の代わりに、沢山の愛情を京に注いでくれた。

それだけで十分じゃないか――

「…とーしゃま、あいちゃんのこと、すき?」

「えっ…」

再び投げ掛けられた京からの質問に、思わず心臓が跳ね上がる。

「……好きだよ。大切な人たちのうちの一人だ。一番は勿論、京だけどな」

少し返答に困ったが、その答えに京は概ね満足したようで嬉しそうに微笑んだ。

「ぼくもとーしゃま、だいすき」

嘘ではない。

むしろ今の自分の気持ちとして、一番正直な言葉だ。

「あいちゃんも、とーしゃまのこと、すき」

「………へ?」

いや、待て落ち着け、俺。

愛梨もきっと同じような質問をされて、同じような返答をしたのだろう。

勿論、嫌われてはいないだろうし京に訊かれた手前では好きとしか言えまい。
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