いとしいあなたに幸福を
「あいちゃん、いつもとーしゃまみてる」

「えっ…」

「とーしゃまみてるあいちゃん、うれしそう」

自分を見ている愛梨が、嬉しそう?

「…愛ちゃんは、その散歩の際に京様から母様と呼ばれて…泣いてしまったんです」

京の言葉に困惑する自分を見兼ねたように、咲良はそう言った。

「泣いて……何でだ?」

「京様が慕ってくれるのは嬉しいけれど、都様に申し訳ないって…あの子はそう言ってましたわ」

「都に申し訳ないって…どういうことだよっ…!」

思わず声を荒げると、腕の中で京がびくりと震えた。

「とーしゃま、おこってる…?」

「あ…ああ、怒ってないよ」

やんわりと言い聞かせてやると、京は周の胸元にぎゅう、としがみ付いてきた。

「…愛ちゃんは、もうすぐ周様が此処にいらっしゃるから、隠れてしまったんですの」

「だから、何で…」

「今の気分のままじゃ周様と顔を合わせられないって」

京に母親だと勘違いされて、慕われてるのは嬉しいけど都に申し訳なくて。

それで泣いてしまったから、俺の顔が見られない?
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