いとしいあなたに幸福を

11 夜明-よあけ-

「ゆりくん、あそぼ?」

――非番の日に邸の庭園で昼寝をしていた悠梨は、頭上から降ってきた声に面食らって声の主を見上げた。

「…ああ、京か。もう勉強の時間は終わったのか?」

「うん!」

月日の流れは早いもので、京は四つになった。

周に似てやんちゃな面もあるが、基本的には聞き分けが良く大人しい子だ。

懸念されていた母方の持病は受け継ぐことなく、父に似て身体は丈夫なようで周囲を安堵させている。

「ねえゆりくん、ゆりくんはあいちゃんのお兄ちゃんなんだよね?」

「ああ、そうだよ」

悠梨は身を起こすと、京を肩に乗せて立ち上がった。

「どうやったらぼくもお兄ちゃんになれるの?」

「あー…それは…」

何故唐突に、そんな答えにくい話題を振ってきたのやら。

「あのね、ぼくのなかよしのおともだちにはおとうとがいるんだ。いっしょにあそんだり、おふろに入ったりするんだって」

「へえ」

成程、他の子から話を聞いて羨ましくなったのか。

「…ねえゆりくん、おとうとってどうやったらできるの…?ぼく、おとうとがほしい」

「うーん…」
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