いとしいあなたに幸福を
悠梨と別れた京は、早速父の元へと急ぐ。

周の仕事部屋の前まで駆けて行くと、扉の前に美月が立っていた。

「みづきちゃん、父さまは?」

「旦那様は大事な会議中ですわ、後になさってくださいませ」

「…むう」

素っ気なくあしらわれた京は、不満げに頬を膨らませる。

「だけど父さま、いつもならもうおしごとおわってるよ?」

だが美月は聞こえなかったふりをするかのように、頑として扉の前から避けなかった。

「みづきちゃん、どいてよ」

「聞いてませんでしたの?本日はまだお仕事が終わってないと申しましたでしょう?」

「でも…」

「それに京様は旦那様から、こちらにはいらっしゃらないよう言い付けられておりますわよね」

「――美月?何を騒いでんだ?」

不意に扉が開いて、不思議そうに首を傾げた周と陽司が顔を覗かせた。

「旦那様…」

「父さまっ」

「京、どうした?おいで」

差し伸べられた周の両腕に、泣き出しそうな表情を浮かべていた京は、勢い良く抱き付いた。
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