いとしいあなたに幸福を
「あのね、父さま、おねがいがあるの」

「お願い?」

ぐずる京をあやすように、ゆらゆらと周は首を傾げて見せた。

「でもおしごと、まだおわらない?」

「いえ、後は俺がやっておきますから大丈夫ですよ。周様は京様とご一緒に遊んで差し上げてくださいませ」

陽司はそう言って、周にしがみ付いた京の頭を優しく撫でた。

瞬間、京は嬉しそうに顔を綻ばせる。

「ほんとっ?」

「そうか?それじゃ悪いが陽司、後は頼むよ」

「はい」

「ようじくん、ありがとぉ」

陽司はもう一度京の頭を撫でてやると、笑顔で周の後ろ姿を見送った。

「…美月、余り京様を苛めるなよ」

そして周の姿が見えなくなると、傍らの美月の姿をちらりと横目で伺う。

軽く諫めるようにそう声を掛けたら、美月はふいとそっぽを向いた。

「甘やかしてばかりではご立派な跡取りにはなれませんわ」

「必要なら周様がご自分でお教えになるだろ。お前が気にすることじゃないよ」

「………」
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