いとしいあなたに幸福を
「全く、お前は大人げないな。優しい愛ちゃんを少しは見習えよ」

「必要ありませんわ」

「……あ、そう」

美月の頑なさは厘譲りだなと、陽司は呆れたように溜め息をついた。



「父さま、あのね」

「うん?」

周の自室の寝台に降ろされた京は、両脚をぶらぶらと揺らしながら着替える父の背に声を掛けた。

「ぼく、おとうとがほしいの」

「…弟?」

「ゆりくんに、おとうとってどうやったらできるのってきいたら、父さまにたのめって言ってたから」

「悠梨め…」

周は頭を抱えて小さく首を振った。

「…ごめんな、京。俺も、お前の寂しい気持ちは良く解るんだが…お前に弟は出来ないんだよ」

「……どうして?」

「赤ちゃんは父親と母親が仲良くしていないと出来ないんだ。お前には弟を生んでくれる母様がいない。だから…」

「母さまなら、あいちゃんがいるよ?」

「愛ちゃんは、お前の本当の母様じゃない。前にも教えただろう?」
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