いとしいあなたに幸福を
周が、自分と話をする陽司に嫉妬している。

京が、自分に兄弟を産んで欲しいと願っている?

「え……えっ?」

突然の話に混乱してしまって、わけがわからない。

「愛ちゃん、つまり京様は君に本当の母親になって欲しいそうだよ。周様も先程聞いての通り、君のことが大好きだそうで。どうする?」

陽司だけが至極冷静に、笑顔で愛梨に問い掛けてきた。

「で…でも、わたしっ……二年前周さんから…っ断られてっ……」

あのときのことを思い返すと、これ以上は上手く言葉に出来なくて、思わず涙が溢れてくる。

「愛ちゃん…!すまない、泣かないでくれっ…」

瞬間、周が心底申し訳なさそうに声を上げた。

陽司はふと愛梨から身を離すと、周の腕から京を引き取って一歩身を引いていた。

「あいちゃん…」

心配げに声を上げた京に、陽司はこそりと囁く。

「まあ京様、取り敢えずお父様にお任せしましょう?」

京は少し不思議そうに陽司を眺めたあと、こくんと嬉しそうに頷いた。

「…うんっ」

愛梨がその場にへたり込むと、性急に周の両腕に抱き締められた。

「…!」
< 215 / 245 >

この作品をシェア

pagetop