いとしいあなたに幸福を
「愛ちゃん、ごめん…ごめんな…っ俺は君のことが好きなんだ…!多分、君と初めて言葉を交わしたときから…」

――わたしと同じ、ときから。

あのときから好意を抱いてくれていたなんて。

「でも俺は…俺には君を幸せに出来る自信がなくて、想いを伝える勇気すら持てなかった。だからあのときあんな言い方しか出来なくてっ…君をこんなにも傷付けて、困惑させちまった…」

…嬉しい。

悲しい。

申し訳ない。

苦しい。

せつない。

色んな感情が交錯して、入り交じって涙と一緒に溢れ出して、胸が痛くなった。

きっと周も、同じような想いに呑まれそうになっているのかも知れない。

けれど渦巻くその感情の中に、疑問や憤りなどはなかった。

あのとき告げられた言葉が、自分のためを想ってのことだと解っていたから。

拒まれて尚、自分が一方的に周を想い続けていただけなのに。

なのに、何故、謝るの?

「っ…周さんが謝る必要なんて…ないのに…っ」

元より叶わないと思っていた恋心なのだから。

「愛ちゃん…」
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