いとしいあなたに幸福を
不安を抱えて恐る恐る訊ねると、周の腕に一層きつく抱き締められた。

「それでもいい…!俺が君を束縛してたことに比べれば、そんなの可愛いもんだよ!!」

「だってあいちゃん、ぼくのほんとの母さまになってくれるんでしょ?」

陽司の腕に収まったまま、京が満面の笑顔で問い掛けてきた。

「きっ…京くん…」

「どうやらこれでお父様は嘘つきにならずに済みそうですね、京様」

すると陽司がしたり顔で京の顔を覗き込む。

「…陽司、お前……」

そういえば京が割って入る前、陽司が言っていた言葉の真意が良く解らなかった。

あれはどういう意味だったのだろう。

「陽司さん。あの、さっきのは…」

周から少し身を離して陽司を見上げると、陽司は首を傾げてくすりと笑った。

「…ああ、驚かせてごめんね。あれは周様の気持ちに、発破を掛けるための言葉だよ。ああでもしないと、周様が動きそうになかったものだから」

そんな陽司に、周が少し半信半疑な様子で問うた。

「陽司お前…さっきのは本心なんじゃないのか」

「半々、ですかね。勿論、愛ちゃんは可愛いですし。だけど俺にとって悠梨くんや愛ちゃんは、弟妹みたいなものなんですよ。それに俺が一番に幸せになって頂きたいと思ってる方は、周様ですから」

「…へ?」

陽司の言葉に、周は面食らったように目を瞬いた。
< 218 / 245 >

この作品をシェア

pagetop