いとしいあなたに幸福を
「以前に言いましたでしょう?周様は危なっかしいから心配なんですよ。周様には、貴方や京様をしっかりと支えてくれる女性がいないと駄目なんです」

陽司はゆっくりとこちらに歩み寄ると、京を愛梨と周の二人の間に納まるように降ろしてやった。

すると京は嬉しそうに周と愛梨の顔を見上げると、二人の腕を引き寄せて愛らしい笑顔を浮かべた。

「まあ、今回の立役者は京様ですね」

「うんっ!父さまとあいちゃん、なかよしだからおとうとできるよね?」

「え…えっと……」

周は恥ずかしげに赤面しながら、愛梨のほうに向き直る。

愛梨は、自分が今どんな顔をしているのか全然分からなかった。

「愛ちゃん、あのさ…今更改まるのもなんだけど、有耶無耶なのはもっと嫌だからさ…もし、今でも俺を好きでいてくれたら――俺の息子の母親に…俺の奥さんに、なってください」

――嬉しい。

嬉しい。

「うれしい……」

再び胸のうちを満たして言葉になったのは、たったその一言だった。

それと同時に一度は止まり掛けていた涙が、また溢れる。

「でも、わたし…わたしみたいな身分の低い人間が…周さんの傍にいていいんですか…?」

周や京が求めてくれても、相手は国を治める領主とその子息――周囲がそう簡単に認めてくれるだろうか。

「俺の母は…身分や種族で区別されることのない国を作ろうとしてたんだ。その母も身分の違いから、俺の父との結婚を断念してる」

「!」
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