いとしいあなたに幸福を
「その代わりに、父との間に生まれた俺にその夢を託したんだ。だからその母の遺志を、俺が継いでいければいいと思ってる…」

周は照れ臭そうに笑いながら、自身の金髪をぐしゃぐしゃと掻き混ぜた。

「それに、俺には半分しか春雷の血は流れてないけど…だからこそ春雷の国を造った、風使いたちの血筋も大切に守っていきたいんだ」

周の掌が、さらりと愛梨の銀髪を優しく撫でる。

その感触が心地好くて、周の言葉が嬉しくて、心がくすぐったくなった。

「勿論…初めっからみんながみんな、俺と君とのことを認めてくれるとは限らない。それに俺自身…まだ領主としては半人前で、怠けてた時期のせいもあって頼りないしな」

陽司ら部下の支えもあって、周は最近領主としてなかなか様になってきたところだった。

とはいえ、まだ二十歳の若年領主とあって各国の領主が集う会合などでは遥かに歳上の領主たちに嘲弄(ちょうろう)されているそうだが。

「それでも…俺は君と京となら、きっと母の叶えたかった夢が叶えられると思うんだ」

「周さん…」

そう言ってくれるなら。

自分が、周の支えになれるのなら。

「…わたしにも、頑張る周さんのお手伝いをさせてください」

そう告げて、髪を撫でる手に頬を擦り寄せると、周は今まで愛梨が見た中でも一番の満面の笑顔を浮かべた。

次いで、京と一緒に思い切り強く抱き締められる。

「きゃっ…」

「父さま、くるしいよぉ」

愛梨が驚いて声を上げるのと同時に、京が嬉しそうに抗議の声を上げた。
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