いとしいあなたに幸福を
「有難う京、愛ちゃん。俺、凄く幸せだよ。多分、世界一幸せだ」

そう告げる周の声は、少し掠れていた。

「…!わたしも」

貴方の近くにいられるだけでも、幸せだと思っていた。

たとえ想いが届かなくても、傍にいられるだけで十分幸せだと思っていた。

でも今は、そう思っていたときよりも、何十倍も幸せな気持ちだ。

自分がそうであるように周と京も同じ気持ちだったなら、もっと嬉しい。

「父さま、あいちゃん、ふたりともだいすき」

「うん…俺も、お前と愛ちゃんのことが大好きだよ、京」

周は京の頬に口付けると、続けて愛梨の頬に手を触れた。

「…!」

少し緊張して身を固くすると、周はへらりとはぐらかすように笑って見せた。

愛梨は照れ臭くなって、赤面してしまった顔を隠すように俯く。

「…まだ、気が早いかな」

「そうですねぇ、周様。物事には順序というものがありますから」

すると今まで様子を黙って見守っていた陽司が、不意に口を挟んできた。

「…なんだよ陽司、急に」

不満げに口を尖らせて問う周に、陽司はにっこりと笑顔を作って周の背後を指差した。
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