いとしいあなたに幸福を
――訳が解らない。

周に再婚をせがむよう京を焚き付けてみたはいいものの、少し心配になって様子を見に来たら。

何故か妹と周が床に座り込んで、更に京を間に挟んで、仲睦まじくしているではないか。

悠梨は取り急ぎ周から愛梨を引き離すと、京を抱き上げたまま当惑する愛梨を尻目に、周を目の前に正座させた。

「……で?事情を簡潔且つ明瞭に説明して貰おうか、周…?」

低い声で唸るように問い質すと、周は毅然とした眼差しでこちらを見つめてきた。

「悠梨…!妹さんを俺に、くだ」

「断る」

案の定予測していた言葉で真っ向勝負を仕掛けてきた周をばっさり切り捨てると、愛梨がおずおずと口を開き掛けた。

「お兄ちゃん、あの…」

「愛梨、お前は黙ってろ!なあ周、二年前にお前は俺に何て言った?」

苛立ちを含んだ眼差しを投げ付けると、周は少し狼狽したように俯いた。

「…忘れたのかよ?お前は愛梨を不幸にさせたくないから、愛梨の想いに応えられないって言ったんだぞ」

「……あのときはそれが最善だと思ったんだ。でも、そのせいで愛ちゃんを泣かせちまったのが、ずっと心残りだった」

「お前が愛梨のためを想ってそうしたって解ってるから、俺は何も言えなかったんだ…!周、愛梨がいつからお前のこと好きだったか解ってんのかよ?!六年前だぞ!?」

「俺もだよ!!」

「はあ?!」

勢い良く周を睨み付けると、周もこちらを真っ直ぐ見返した。
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