いとしいあなたに幸福を
「俺も愛ちゃんのことが、六年前から好きなんだ…!!俺はっ…何度諦めようとしても無理だった、無理なんだ悠梨…!俺は愛ちゃんが好きで好きで堪らないんだよ!!」

「…なっ」

恥ずかしげもなくでかい声で喚く周に、悠梨は思わず言葉を失った。

その隙に周は、滔々と言葉を連ね始める。

「俺のせいで、何度も愛ちゃんを泣かせちまった。…だから悠梨、愛ちゃんの涙の分だけ俺のことを殴ってくれて構わない、だけど俺には彼女が必要なんだ!俺と一緒になったら苦労させることは承知してる…それでも俺が絶対愛ちゃんのことを守るからっ…!!」

「っふざけんな…!!俺だって愛梨には本気で好きな奴と一緒になって欲しいと思ってるよ…!お前が愛梨を好きになってくれたらと、思ったことだってもあるよ!でもお前は…っ」

悠梨はちらりと横目で愛梨の腕に抱かれた京に視線を向けた。

「お前の相手じゃ、環境が特殊過ぎるんだよ…!大事な妹に苦労すると解り切った道を選ばせたくないのは、当然だろう!?」

「悠梨…俺は、それでも…」

周はつらそうに眉を顰めて、俯いた。

俺だって、本当ならこんなことは言いたくない。

互いに好意を持っている者同士の仲を引き裂くなんて、無粋な真似したくはない。

それでも愛梨のためなら、無粋なことでも無様なことでも何だってしてやると決めたんだ。

「――ゆりくん」

すると、いつの間にか愛梨の腕から降りていた京が悠梨の衣服の裾を引っ張っていた。

「京…」

小さなお前を利用しようとしたのが、いけなかったのか…?

京の蒼い眼に見つめられ、悠梨の胸中は後悔と罪悪感で満たされた。
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