いとしいあなたに幸福を
――凡そ一週間に渡る八ヶ国の首脳会議を終えて、周は漸く帰途につく。

愛する妻や息子と七日も離れなければならなかった苦痛とも、これでお別れである。

再婚後初の顔合わせだったこともあり、他国の領主たちからは祝辞や冷やかしの言葉責めを受けてしまった。

式典を開かず再婚の一報だけを入れて余り愛梨のことは詳しく伝えずにいたことも手伝って、余計に彼らは自分の再婚相手に興味津々らしかった。

都の父である、秋雨の領主は――多少複雑そうな表情ながらも、形式的には祝いの言葉を述べてくれた。

しかし周が一番逢って話をしたかった薄暮の領主は、珍しく欠席していた。

八ヶ国全ての領主に招集が掛かる会合には、必ず欠かさずに出席していた筈だがどうしたのだろう。

彼のことが心配ではあったが、今は家族と久々に逢えることで頭がいっぱいだった。

――特に、愛梨との夫婦仲に関しては陽司ら部下たちから茶々を入れられるくらいに良好だ。

共に眠れる夜には、盛りのついた十代でもあるまいしと毎回自己嫌悪に陥りつつも必ず愛梨を求めてしまう。

愛梨の白い肢体が自分を求めて受け入れてくれるのが、あの鈴が鳴るような声に甘く名を呼ばれるのが、堪らなく嬉しくて仕方ないのだ。

悠梨からは愛梨に余り負担を掛けるなと叱責されているのだが。

押さえ付けていた分の感情が、軒並み性欲へと置き換わったのかと自分でも呆れる程だ。

(でも、今は流石に少し控えとかないとな――)

周は自嘲げに笑みを零しながら、妻子の待つ部屋へと足早に歩を進めた。

「――愛梨、京!」

扉を開けると、愛梨は窓際に置かれた籐細工の肘掛け椅子に座って京と話し込んでいたところだった。

二人は周の姿を認めた瞬間、嬉しそうに笑顔を浮かべてくれた。
< 233 / 245 >

この作品をシェア

pagetop