いとしいあなたに幸福を
京に笑い掛けられ、悠梨は小さく首を傾げた。

「偶然、俺の足が向いた先が周の行き先と一緒だっただけだよ」

「お兄ちゃんったら、またそんなこと言って…素直に心配だったって言えばいいのに」

「…まあ周に何かあったらお前たちが悲しむだろ?周はどうなろうが一向に構わないが、それは困る」

悠梨は飽くまで、表情を変えずにそう言っているが。

愛梨と京がくすくすと笑うので、周もつられて笑ってしまった。

「悠梨、お前って何て言うか…あれだよな」

「何だよ」

「何でもねえよ」

「父さんとゆりくんはなかよし、でしょ?母さん」

「ええ、そうね」

幼い京にまで見透かされ、悠梨は少しばつが悪そうにこちらをねめ付けた。

「…仲良くない」

「京、こいつは俺やお前に愛梨を取られて拗ねてんだよ。昔はもう少し素直だったんだがな…お前はこんな兄貴になるんじゃないぞ?」

「うるさいぞ親馬鹿。どさくさ紛れに余計なこと言うな」

「でもゆりくん、ぼくにはやさしいよ」

京が傍に歩み寄ると、悠梨はその頭を優しく撫でてやった。

「そりゃ、お前は可愛いからな。周は可愛くも何ともない」
< 236 / 245 >

この作品をシェア

pagetop