いとしいあなたに幸福を
「うん…愛梨と京が一緒に考えてくれた名前なら、生まれて来る子もきっと喜ぶよ。でも一応まだ、性別は判ってないけどな」

「まあ、愛梨の子供なら男でも女でも必ず可愛い子が生まれるさ。父親には似ないよう祈っとくぜ」

「…悠梨、お前な」

わざわざ突っ掛かってくるなよな、と小さく悠梨を小突いてやった。

「おとうと、はやくうまれてこないかな?」

「京…本当に生まれるのは弟なのか?俺みたいに妹かも知れないぞ?」

悠梨が京の頭をがしがしと強めに掻き混ぜる。

すると京は、悠梨に向かって満面の笑顔を浮かべて見せた。

「うんっ!おとうとだよぉ」

「……お、おう…」

少々困り気味の悠梨に、周はこそりと耳打ちした。

「…占部は占術師の家系の中でも強い予知能力を持つ血筋らしくてな。都にその素質があるとは聞いてなかったが京もその血を受け継いだんだろう」

「へえ…しかし京は、霊媒師の素質は全然ないのか?」

「今のところ兆候は全くないな…まあ跡取りが霊媒師である必要はないし、京が跡を継ぐのを嫌がったら無理強いする気はないよ」

京は、四分の三が秋雨の血筋だ。

春雷の霊媒師としての才覚を受け継がなかったとしても無理はない。

「…じゃあこれから生まれる下の子に継がせるのかよ」

「いや…子供たちの未来を俺の一存で決めてしまうつもりはないんだ」
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