いとしいあなたに幸福を
もしも子供たちが、自然と自分の跡を継ぎたいと思ってくれるようになったのなら――やっと自分は立派な領主になれたと思えるかも知れない。

情けない姿ばかり見せていたら、子供たちもきっと跡継ぎになることを拒むだろう。

「…いいのか、それで」

「やっぱり俺はさ、余りいい領主ではないと思うんだ。どんなときも領主としての立場を優先するなんて、俺には出来そうにない。どんなに春雷の住民たちを大切だと思ってても、俺が一番優先させたいのは愛梨や京や、悠梨のことだよ」

「何で俺まで含まれてるんだ」

「だって、ゆりくんはぼくたちのかぞくでしょ」

すると悠梨は少しだけ戸惑ったように首を傾げて、小さく息を吐いた。

「…俺は確かに愛梨の兄貴だが、周の家族になった覚えはないんだがな……じゃあ特別、そういうことにしておいてやるよ」

「もう。素直じゃないんだから。お兄ちゃんだって、本当は周さんのこと大切に思ってるでしょ」

「…思ってない」

「わたしに嘘ついたって、ちゃんと解るんだからね?お兄ちゃんの恥ずかしがり屋さん」

「………」

悠梨は無表情のまま、軽く頭を押さえて俯いた。

「お前には敵わないよ、愛梨」


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