いとしいあなたに幸福を
悠梨は急いで妹に上着を被せてやると、熱に浮かされた身体をおぶって走り出した。

雨は冷たく、残り少ない悠梨の体力と体温を容赦せず奪ってゆく。

泥水を含んだ靴や泥濘(ぬかる)んだ地面のせいで、思うように足が進まない。

それでも悠梨は、妹を守るためと両親の無念を晴らしたい一心で、走り続けた。

何もかも限界の中――それだけが悠梨の心の支えだった。


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