いとしいあなたに幸福を
「――悠梨くん、少し緊張してるね」
陽司から声を掛けられて、悠梨は自覚していなかった心の動揺に気付かされた。
「君の落ち着かない姿なんて、久々に見たよ」
「…すみません」
悠梨と陽司が座る長椅子の傍には、大きな扉が聳(そび)え立っている。
その扉の向こうに、正に出産を迎えた愛梨と傍に付き添う周と京がいる。
「いや、いいんだよ。君は愛ちゃんのこととなるといつだって一生懸命なんだから。初めて逢ったときから、そうだったよね」
愛梨のこととなると。
そうなるに至った経緯を思い返して悠梨は少し口元を緩めた。
「俺…愛梨が生まれたときからずっと一緒なんです。あいつは何をするにも俺の後にくっついてきたから、最初は少し鬱陶しいなって思ったこともあります」
「へえ」
陽司は少し意外そうに眼を丸くした。
確かに、愛梨を邪険に扱うだなんて今の己からは想像し難いかも知れない。
「そのせいで俺、一度不注意で愛梨に怪我させたことがあるんです。怪我は大したことなかったけど…俺は物凄く後悔して。父からも、愛梨は女の子でお前より小さいんだからお前が守ってやれって叱られたんです。でも、一番きつかったのは愛梨が俺のこと笑って許してくれたことで…」
「成程、だから悠梨くんは愛ちゃんに対して過保護かつ頭が上がらないってことか」
「ええ…まあ」
図星を突かれて気恥ずかしかったが、それでも悠梨はそれを表情に出さずに頷いた。
なのに、愛梨にはどんなに無表情でも気持ちを見透かされてしまうのは何故なのだろう。
陽司から声を掛けられて、悠梨は自覚していなかった心の動揺に気付かされた。
「君の落ち着かない姿なんて、久々に見たよ」
「…すみません」
悠梨と陽司が座る長椅子の傍には、大きな扉が聳(そび)え立っている。
その扉の向こうに、正に出産を迎えた愛梨と傍に付き添う周と京がいる。
「いや、いいんだよ。君は愛ちゃんのこととなるといつだって一生懸命なんだから。初めて逢ったときから、そうだったよね」
愛梨のこととなると。
そうなるに至った経緯を思い返して悠梨は少し口元を緩めた。
「俺…愛梨が生まれたときからずっと一緒なんです。あいつは何をするにも俺の後にくっついてきたから、最初は少し鬱陶しいなって思ったこともあります」
「へえ」
陽司は少し意外そうに眼を丸くした。
確かに、愛梨を邪険に扱うだなんて今の己からは想像し難いかも知れない。
「そのせいで俺、一度不注意で愛梨に怪我させたことがあるんです。怪我は大したことなかったけど…俺は物凄く後悔して。父からも、愛梨は女の子でお前より小さいんだからお前が守ってやれって叱られたんです。でも、一番きつかったのは愛梨が俺のこと笑って許してくれたことで…」
「成程、だから悠梨くんは愛ちゃんに対して過保護かつ頭が上がらないってことか」
「ええ…まあ」
図星を突かれて気恥ずかしかったが、それでも悠梨はそれを表情に出さずに頷いた。
なのに、愛梨にはどんなに無表情でも気持ちを見透かされてしまうのは何故なのだろう。