いとしいあなたに幸福を
「周様、お待ちください!この雨の中、例の集落へ行ったところで何も見つかりやしませんよ!!」

「だったらお前は帰れ。俺一人で十分だ」

周は市街地を抜けると、一面に広がる平原を見渡した。

此処からは現地まで転移したほうが早そうだ。

(今日は其処ら中、水だらけだから水の精霊の力が借り易そうだな)

周が軽く水の精霊に力を貸してくれるよう念じると、合わせた両手から青白い光が溢れ出した。

「しっ…周様、お待ちください!」

相変わらず喚いている陽司に苛立って、周はぶるぶると頭を振った。

「何だよっ!俺は戻らないって言ってるだろ!!」

「いえ、そうではなくてあちらに…!」

「はあ?」

陽司が指し示す方向には何も見えなかった。

だが、微かに何かの気配を感じる。

「…何だ?人か?」

人の気配にしては弱々しいが、その周辺だけ風の精霊が妙に騒がしい。

「何かは判りませんが…行ってみますか」

「何だ、やけに物分かりがいいな」

「どうせ止めても無駄でしょうからね」
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