いとしいあなたに幸福を
「!!」

少年の背後に、数人の男たちが現れた。

何れも暗茶髪だ。

「餓鬼が増えてやがるな。その赤毛は風使いじゃなさそうだが、そっちのちびは…眼は紅いが金髪か?」

――その一言に、思わずかちんと来た。

気心の知れた相手に言われるなら、まだしも。

「…おいおっさん、誰がちびだ」

確かに今は、上背の陽司よりも幾分小さいかも知れないが。

「は?」

「ふざけんなよ、俺はこれから伸びるんだっ!」

憤慨した周は、その怒声に驚いて目を瞬く少年を押し退けて男たちに詰め寄った。

「陽司!手ぇ出すなよ」

「はあ…」

陽司は呆れ気味に首を振ると、少年が巻き込まれないように彼の手を引いてやった。

「なんだぁ?ちびの餓鬼、てめえ一人で叶うと思ってんのか?」

下品な笑みを浮かべる男を目の前に、周は準備運動のようにひらひらと両手を振った。

「成程な、お前らが金儲けのために風使いたちを攫ってた訳か」

「暢気なこと言ってられるのも今のうちだぜ…ついでにてめえらも売り飛ばして――ぐぎゃあっ!!」
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