いとしいあなたに幸福を
次の瞬間、左頬に周の拳を受けた男は後方に吹っ飛ばされた。

「こっ、この餓鬼…!」

「俺の国で人攫いとはいい度胸だな?お前ら全員、纏めて掛かって来いよ!」

その言葉に、少年は周を不思議そうに見つめた。

「…俺、の?」

男たちもそれに続いて、俄にどよめき出した。

「おい、まさかその金髪…」

「春雷の領主の息子じゃねえのか?!」

「今更気付いたのかよ、このろくでなし共」

周は改めて身構え直したが、男たちは互いに目配せすると少しずつ後退りした。

「…退(ひ)けっ!」

その中の一人が上げた声を合図に、集団が方々に散らばった。

「待て!逃げんなっ」

周は後を追おうと身を乗り出したが、陽司に腕を掴まれ制止された。

「周様、深追いは危険です!それに今は、彼らを…!」

陽司の手を振り払いかけた周は、その後ろに立つ銀髪の少年を見て踏み留まった。

「…そうだな。流石にお前の言う通りだ」

今は、少年らを保護することのほうが先決だ。
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