いとしいあなたに幸福を
「……っ…あんた」

すると、少年が恐る恐る周に声を掛けてきた。

「本当に領主様の息子、なのか…」

「ああ。あんまりらしくないって評判だけどな」

横目で陽司が激しく頷いているのが見えた。

後で一発殴ってやる。

「何だっていい…!頼む…妹を助けてくれ!!」

「妹?…病気なのか?」

周はさっきからぴくりとも動かない幼子に目を遣った。

「凄い高熱なんだ…!なのに、こんな長雨に晒してしまってっ…」

「…解った、必ず助ける。陽司、代わりにその子を運んでやれ」

「はいっ」

此方を信用してくれたのか、今度は背から妹を引き離しても少年は何も言わなかった。

「さっきの連中に集落を襲われたんだな。他に助かった人はいないのか?」

周の問い掛けに、少年は悲しげに首を振った。

「…俺たち二人以外は、多分……」

「そうか…大変だったな」

落ち込むように俯いた少年の肩を、周は軽く叩いてやった。
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