いとしいあなたに幸福を
父さん、母さん、お願いだ。

愛梨を助けて。

愛梨を守って。

代わりに俺はどうなってもいいから。

お願いだから、愛梨を連れて行かないで――



「――愛梨っ!!」

「うおっ?!」

悠梨が叫び声を上げて飛び起きた瞬間、傍らから驚いたような奇声が上がった。

「…え」

声のしたほうを振り向くと、金髪の少年が椅子から転げ落ちていた。

「よお、おはよう」

少年は腰の辺りを擦りながら悠梨に向かってひらひらと手を振った。

この少年は確か、周――そんな名前だったか。

しかし今の悠梨には、それよりも彼に訊きたいことがあった。

「愛梨はっ…!俺の妹はどうなったんだ!?」

性急に周へ詰め寄ると、周は少し面食らった様子で目を見開いた後、くすりと笑みを溢した。

「そうか、あの子は愛梨っていうのか」
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