いとしいあなたに幸福を
やっと名前が分かった、と呟きながら、周は悠梨を落ち着かせるように肩を軽く叩いた。

「安心しろよ、あの子も無事だ」

「本当かっ…?」

「ああ、肺炎になりかけてたから、暫く安静にしてなきゃならないけどな。まだ眠ってるかも知れないが逢いに行くか?」

肺炎になりかけていた──

それを聞いた瞬間、罪悪感に苛まれた。

自分にもっと力があれば、妹をあんな危険な目に遭わせたり、苦しい想いをさせずに済んだのに。

「そんなに気落ちするなよ、あんたが頑張ったお陰で妹は助かったんだぜ」

「…俺が?」

「だってそうだろ?あんたが街のすぐ近くまであの子を背負って来れてなけりゃ、俺たちが二人を見付けることは出来なかったんだからな」

周はにんまりと満面の笑みを浮かべると、今度は強めにばしばしと悠梨の肩を叩いた。

「妹のことが心配なんだろ。向こうも案外、もう目を覚ましてあんたのこと待ってるかもよ?」

周が励ましてくれたお陰か、悠梨は少し救われた気持ちになった。

「もう起きれるか?ほら、こっちだよ」

「わっ…ちょ…」

少し強引に腕を引かれ、悠梨は少しふらつきながら周の後に続いた。

どうやら悠梨が眠っていたのは病院の一室だったらしい。

田舎育ちの悠梨には、規則的に扉が並ぶ立派な白壁と廊下が物珍しくて思わず目を泳がせてしまった。
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