いとしいあなたに幸福を
「ああ、悠梨ってんだ。で、妹が愛梨だそうだよ」
自分で名乗る前に周が言ってくれてしまったので、悠梨は陽司に軽く会釈だけして見せた。
「悠梨くんか…元気になって良かったよ。愛梨ちゃんも、もうじき目を覚ますってお医者様が言ってたよ」
「愛梨…」
悠梨は妹の顔がよく見えるように傍らへ駆け寄った。
ゆっくりと妹の頭を撫でてやる悠梨の姿に、周は遠慮がちに声を掛けた。
「…もう少し落ち着いて、気が向いたらでいい。もしお前の集落が襲われた事件で知ってることがあったら、俺に話してくれないか」
「!」
周の言葉に、悠梨は弾かれたように顔を上げた。
そうだ、あの人攫いたちが話していたことを伝えれば、捕まったみんなを助けられるかも知れない。
「周…さん。俺を領主様に逢わせてくれ!伝えなきゃならないことがあるんだ!!」
突如声を荒げた悠梨に周は驚いた様子で瞬きすると、再び悠梨の肩に両手を置いた。
「…落ち着け、悠梨。まず、今更思い出したようにさん付けするのはやめてくれ。あんた、俺と同じくらいだろ?」
「じゅ…十四だけど…」
「俺も十四だ。しかもあんたのほうが背はでかい、だから呼び捨てでいい」
何だか良く解らないけど、悠梨は取り敢えず頷いた。
「じ、じゃあ周…あんたの母さんに逢わせてくれないか?」
「…悪いが、母は暫く時間が取れないんだ。実はな…南東の集落から、立て続けに春雷の風使いたちの住む集落が襲われ始めてる。母は今、まだ無事な集落を守るために奔走してるんだ」
自分で名乗る前に周が言ってくれてしまったので、悠梨は陽司に軽く会釈だけして見せた。
「悠梨くんか…元気になって良かったよ。愛梨ちゃんも、もうじき目を覚ますってお医者様が言ってたよ」
「愛梨…」
悠梨は妹の顔がよく見えるように傍らへ駆け寄った。
ゆっくりと妹の頭を撫でてやる悠梨の姿に、周は遠慮がちに声を掛けた。
「…もう少し落ち着いて、気が向いたらでいい。もしお前の集落が襲われた事件で知ってることがあったら、俺に話してくれないか」
「!」
周の言葉に、悠梨は弾かれたように顔を上げた。
そうだ、あの人攫いたちが話していたことを伝えれば、捕まったみんなを助けられるかも知れない。
「周…さん。俺を領主様に逢わせてくれ!伝えなきゃならないことがあるんだ!!」
突如声を荒げた悠梨に周は驚いた様子で瞬きすると、再び悠梨の肩に両手を置いた。
「…落ち着け、悠梨。まず、今更思い出したようにさん付けするのはやめてくれ。あんた、俺と同じくらいだろ?」
「じゅ…十四だけど…」
「俺も十四だ。しかもあんたのほうが背はでかい、だから呼び捨てでいい」
何だか良く解らないけど、悠梨は取り敢えず頷いた。
「じ、じゃあ周…あんたの母さんに逢わせてくれないか?」
「…悪いが、母は暫く時間が取れないんだ。実はな…南東の集落から、立て続けに春雷の風使いたちの住む集落が襲われ始めてる。母は今、まだ無事な集落を守るために奔走してるんだ」