いとしいあなたに幸福を
「そういえば陽司、知ってるか?最近良く耳にする物騒な話」
「え…ええ。郊外の集落で、行方不明者が多発している事件ですね。しかも、いなくなっているのは純血の風使いばかりだとか」
「俺は、その事件をどうにか解決したいんだ。風使いたちは春雷にとって国の基礎を築いてくれた、大切な祖先たちの一族だろ」
母の厘はほぼ純血の春雷人に近く、風使いたちと同じ銀色の髪と緋色の眼をしている。
周は髪色こそ白金ではあるが、緋色の眼を受け継いだ。
少なかれども、自分にも彼らの血筋は確かに受け継がれている。
「周様…まさかそれで、最近邸を抜け出されることが多かったのですか?」
きょとんとしてこちらを見つめる陽司に、周は首を傾げて見せた。
「さて、なあ?」
「っいけません!大切な跡取りの貴方様に、万一のことがあったらどうなさるんですか!」
結局跡取りだの何だのの話に引き戻されてしまい、周は内心苦笑した。
「心配しなくたって、行方不明者はみんな純血の風使いなんだぜ?俺は半端者だし風使いでもないんだから、平気だよ」
「周様のお髪は光加減によって銀に見えることもございますし、厘様譲りの緋色の眼です。もしも一連の行方不明事件が人為的なものだとしたら、周様に危険が及ぶかも知れないのですよ?!」
「陽司、お前は俺が其処ら辺の奴に負けるとでも思ってんのか?」
「勿論周様の実力は存じておりますが…!とにかく危険なことには首を突っ込まず、大人しくしててください!!」
「はいはい」
ああ――この調子だと母に報告が行くなあ、と周は数分前の自身の誤判断を多少後悔した。
+ + +
「え…ええ。郊外の集落で、行方不明者が多発している事件ですね。しかも、いなくなっているのは純血の風使いばかりだとか」
「俺は、その事件をどうにか解決したいんだ。風使いたちは春雷にとって国の基礎を築いてくれた、大切な祖先たちの一族だろ」
母の厘はほぼ純血の春雷人に近く、風使いたちと同じ銀色の髪と緋色の眼をしている。
周は髪色こそ白金ではあるが、緋色の眼を受け継いだ。
少なかれども、自分にも彼らの血筋は確かに受け継がれている。
「周様…まさかそれで、最近邸を抜け出されることが多かったのですか?」
きょとんとしてこちらを見つめる陽司に、周は首を傾げて見せた。
「さて、なあ?」
「っいけません!大切な跡取りの貴方様に、万一のことがあったらどうなさるんですか!」
結局跡取りだの何だのの話に引き戻されてしまい、周は内心苦笑した。
「心配しなくたって、行方不明者はみんな純血の風使いなんだぜ?俺は半端者だし風使いでもないんだから、平気だよ」
「周様のお髪は光加減によって銀に見えることもございますし、厘様譲りの緋色の眼です。もしも一連の行方不明事件が人為的なものだとしたら、周様に危険が及ぶかも知れないのですよ?!」
「陽司、お前は俺が其処ら辺の奴に負けるとでも思ってんのか?」
「勿論周様の実力は存じておりますが…!とにかく危険なことには首を突っ込まず、大人しくしててください!!」
「はいはい」
ああ――この調子だと母に報告が行くなあ、と周は数分前の自身の誤判断を多少後悔した。
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