いとしいあなたに幸福を
「しかし、奴が人攫いの集団に荷担か……うん、やりかねないな。じゃあ二人は架々見が関与してるのを知ったからしつこく狙われてるのか」

「ああ…それにあの野郎、愛梨を気に入ったみたいなんだよ。愛梨のことを自分の傍に置きたがってるから、それで…」

あの男が愛梨を見たときの眼を思い出すと、未だにぞっとする。

「…え?ちょ、ちょっと待てよ。愛梨ちゃん、いくつだっけ?」

「?」

急に狼狽し出した周に、悠梨はそういえば言っていなかったかと首を傾げた。

「俺の四つ下…十歳だよ」

「……あいつは、俺や悠梨の八つ歳上…二十二だぞ」

「………え」

その瞬間、別の意味で更に背筋がぞっとした。

良かった…本っっ当に良かった。

あのとき追手の口車に乗っていたら、今頃愛梨はあの変態の元に連れて行かれ何をされていたことか。

自分の判断は誤っていなかった。

幸い、当の愛梨はまだそのことをよく解っていないようだが。

「まあ、確かに愛梨ちゃんは可愛いって言うか凄く美人さんだよな。大きくなったらきっと、とっても綺麗になるよ」

悠梨の心の中での悶絶を他所に、周は愛梨に向かってにこにこと笑い掛けた。

愛梨もそれに対して、少し控えめに照れ笑いを返して見せる。

「お…おい、周…いくらあんたでも、愛梨に手を出したら許さないからな」
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