いとしいあなたに幸福を
「それでさ、悠梨」

「うん?」

「一つ、頼みがあるんだよ。今話した通り来年には嫁さんを貰うことになる俺なんだけどな……実は、同い歳の奴と接する機会って今まで殆どなかったんだ」

(…周も?)

ふと悠梨は、集落での暮らしを思い出した。

悠梨の周りには歳の近い子供なら多くいたものの、何故か同い年の子供だけはいなかった。

それ故、悠梨自身も同年齢と接した機会は少ない。

「それでかな、悠梨が同い年って聞いたら、何だかそれが妙に嬉しくて」

「周」

「だから、あの……俺と友達になってくれないか?」

周は、自然と照れ笑いを浮かべながら悠梨に右手を差し出した。

――まさか領主子息から、こんな願いをされるとは夢にも思わなかった。

けれど目の前の少年となら、彼が領主子息としてでなく単なる一個人として仲良くなれそうな気がした。

悠梨はそれが嬉しくて、差し伸べられた掌を握り返した。

「…こちらこそ、喜んで」


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