いとしいあなたに幸福を
「ご結婚されるお相手とは別に、他に好きな女の子がいるから、ですか?」
「はあ?」
陽司の発言に、周は思わず立ち上がった。
いつもの軽口かと思って陽司を見ると、予想外にその眼は真剣だった。
「以前から縁談に乗り気ではありませんでしたが…最近の周様は明らかに元気がありませんよ」
陽司はゆっくりとこちらへ歩み寄ると、窓の外を見下ろした。
庭では悠梨と愛梨が、兄妹揃って洗濯物を干しているところだった。
「自覚されていないのか、敢えて自覚しようとなさらないのか、知りませんけど…周様はあ――」
「ちょっ、ちょっと待て、何言ってんだ陽司」
狼狽える周を見て、陽司は確信したように頷いた。
「判りやすいんですよ、貴方は。婚約者の令嬢とよりも、彼女といるときのほうが楽しそうなんですから」
「そ…それは……」
解っている。
そんな想いを抱(いだ)くだけ無駄だと。
そんな想いを抱えたままでは、妻となる相手にも申し訳ないと。
だから早く、こんな想いは捨てなければ。
――そう思っていても、愛梨の姿を見掛けると無意識に目で追ってしまう。
当初は愛梨が、幼く庇護すべき存在だから気に掛かるのだろうと、自分に言い聞かせていた。
「はあ?」
陽司の発言に、周は思わず立ち上がった。
いつもの軽口かと思って陽司を見ると、予想外にその眼は真剣だった。
「以前から縁談に乗り気ではありませんでしたが…最近の周様は明らかに元気がありませんよ」
陽司はゆっくりとこちらへ歩み寄ると、窓の外を見下ろした。
庭では悠梨と愛梨が、兄妹揃って洗濯物を干しているところだった。
「自覚されていないのか、敢えて自覚しようとなさらないのか、知りませんけど…周様はあ――」
「ちょっ、ちょっと待て、何言ってんだ陽司」
狼狽える周を見て、陽司は確信したように頷いた。
「判りやすいんですよ、貴方は。婚約者の令嬢とよりも、彼女といるときのほうが楽しそうなんですから」
「そ…それは……」
解っている。
そんな想いを抱(いだ)くだけ無駄だと。
そんな想いを抱えたままでは、妻となる相手にも申し訳ないと。
だから早く、こんな想いは捨てなければ。
――そう思っていても、愛梨の姿を見掛けると無意識に目で追ってしまう。
当初は愛梨が、幼く庇護すべき存在だから気に掛かるのだろうと、自分に言い聞かせていた。