いとしいあなたに幸福を
――大勢の使用人たちと玄関広間で出迎えると、十数名の従者と共に、未来の妻とその父親がゆっくりと姿を現した。

「周様、お久し振りでございます」

目の前に進み出た令嬢が、周に向かって恭しく頭を垂れる。

「遠路遥々、ようこそ春雷まで。お身体の具合は如何ですか?都様」

周は都の前に跪くと、彼女の色白な手を取って口付けた。

「最近、とっても調子が良いのです。きっと今日、周様とお逢い出来たからですわ」

都はそう言って、嬉しそうに笑顔を浮かべた。

確かに、見合いの席で初めて対面したときよりも、随分と顔色は良く見えた。

「私も、お逢い出来るのを心待ちにしておりました。何分、秋雨から春雷までいらっしゃるには些か距離が長いですから。お身体に障らぬか心配でしたよ」

「して、周殿?本日は、厘殿は如何された」

すると都の父――占部が不躾且つ極力手短に、周へ問い掛けた。

「お父様」

「…大変失礼かとは存じますが、生憎母は本日、病の調子が悪く床に臥せっております」

「まあ…病魔に冒される苦しみはわたくしも多少理解出来ます故……厘様へ心よりお見舞い申し上げますわ」

本心から心配そうに俯いた都に対し、占部は少し不機嫌そうに顔を顰めた。

「…兼ねてより厘殿のお加減が悪いことは伺っていたが、これ程までとは。くれぐれもご自愛なさるようお伝え願いたい」

「はい。お気遣い、痛み入ります」

「厘殿にお逢い出来ればと思っていたが、本日は娘を送り届けに同行したまで。これは挨拶も早々にお暇したほうが良いかな」
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