いとしいあなたに幸福を
「周様はこんなにお優しい方なのに、父はそれを見ようともしないのです。…嘆かわしいことですわ」

占部一族で典型的な高慢な令嬢であったら、恐らくもっと気乗りのしない縁談だっただろうが。

大丈夫、彼女となら、きっと上手くやっていける。

「貴女にそう言って頂けるなら、私はそれだけで充分幸せですよ。有難うございます」

そうすればきっと、あの子への想いは今に薄れてゆく。

大丈夫だ。

「周様…こちらこそ有難うございます」

「さ、邸の中を案内致しますのでこちらへどうぞ」

周が掌を差し伸べると、微笑んだ都の手が慎ましやかに重ねられた。


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