いとしいあなたに幸福を
ふと聞こえてきた声に顔を上げると、周と都の視線がこちらに注がれていた。

「あっ…あの…」

今の会話が二人に聞かれていなかっただろうかと、愛梨は少し狼狽えた。

「どうしたんだ、二人共?何かあったのか」

周が不思議そうに首を傾げて駆け寄ってくる。

どうやら、会話の内容は聞かれていないようだ。

「いや、何でもないよ。たまたま通り掛かって、ちょっと出て行きにくくなっただけで」

「そうか…」

悠梨からそう説明を受けた周は頷くと、傍らに寄り添う都を振り向いた。

「都様。二人は私の大切な友人で、悠梨とその妹の愛梨です」

そう――周にとって自分は、友人の妹でしかない。

改めてそう実感すると、やけに悲しかった。

「まあ…周様の?初めまして、都と申しますわ。とても綺麗な方たちなので、つい興味本意のように眺めてしまって…ごめんなさい」

「い、いえ」

予想以上に丁寧な対応をされ、悠梨も愛梨も戸惑いがちに会釈を返した。

綺麗で周とお似合いなのは、貴女のほうなのにと――愛梨は心の中でだけ呟いた。

「二人には邸のことも色々と世話になっているんです。これからは都様とも、頻繁に顔を合わせることもあるでしょうね」

「そうでしたの。二人共…よろしくお願いしますわ」
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