いとしいあなたに幸福を
「わたしに、似た……?」

自分に似ている銀髪の男の子。

兄のことでは、ないのか。

「出来るなら私もその子に逢ってみたかった。けど…今はまだ私をあの人の傍にいさせて」

「都様…?」

「私には、たとえ先のことが視えてもそれを変えることは出来ない。でも、貴女はきっと…」

都はそこまで告げると、苦しげに小さく咳き込んだ。

「!大丈夫ですかっ?」

「平気よ…有難う」

そう言いながら微笑んで見せる都の顔色はあまり良くなかった。

「…愛梨ちゃん、急に変なことを言い出してごめんなさいね。けどお話が出来て嬉しかったわ。またこんな風に話せる機会があればいいのだけれど」

このときの、都の言葉の真意を愛梨が知るのはまだ先のこと。

そしてこのとき以来、愛梨が都とこうして二人きりで話をすることはなかった。

――程なくして、都が懐妊したためだった。


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