いとしいあなたに幸福を
そんな中ふと、最近良く見る夢のことを思い出して自嘲気味に笑みを零した。

それは“そうであって欲しい”と思う自身の願望のような内容で、自分で自分が酷く憐れに思えた。

「――周様!こんなところにいらしたんで…ってその顔、どうなされたんですかっ?!」

駆け寄ってきた陽司に腫れた頬を見られるや否や、耳を劈(つんざ)くような声を上げられた。

「…虫に刺された」

「いやいやいやいやっ、そんな訳ないでしょう!すぐ手当てしますから来てくださいっ」

陽司は強引に周の腕を掴むと、手近な使用人に薬箱を持ってくるよう指示を出した。

そのまま自室まで連行され強制的に椅子に座らされる。

そして頬をしげしげと観察された。

「野郎に見つめられてもあんまりいい気しねえんだけど」

「明らかに打撲傷じゃないですか!最近はやっと落ち着かれたと思ったのにっ…」

「いや、だから喧嘩じゃねえって」

確かに以前はよく、邸を抜け出して街の悪餓鬼相手に喧嘩をふっ掛けたりしていた。

その頃は顔に傷の一つや二つ必ずあるのが日常的な程だったのだが。

「…陽司。俺さ、最近妙な夢を見るんだよ」

「夢?」

陽司は手慣れた様子で周の頬に湿布を貼りながら、首を傾げた。

「子供がふたり…うん。二人いるんだ、俺に」
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